226日の扶桑社の回答

新しい歴史教科書をつくる会
会長 小林 正 様

             株式会社 扶桑社
             代表取締役社長 片桐 松樹 (社印省略)

大変遅くなりましたが、昨年1121日に貴会よりいただきました要望書に対するご返答を下記のようにさせていただきます。

扶桑社は、2002年度供用開始の中学校歴史及び中学校公民の教科書を発行し、教科書事業に参入致しました。これは申すまでもなく、それまでに見られた自虐史観などから脱却し、本来あるべき歴史、公民教育を実現するために必要な教科書を供給していく目的をもったものでありました。

その後、2006年供用開始の教科書についても同じく中学歴史、公民を発行しております。この2回の発行において、他社の教科書を批判できないという法的制約のもとに、自己の教科書の特色を強く打ち出すことで採択活動を行って参りました。この発行活動に際しては、貴会を中心とする力強いご支援を賜る一方で、旧来歴史観を支持する勢力による、各地の教育委員会に不採用を働きかける運動が行われました。結果として、2002年度供給本については歴史教科書で約1千部、2006年度については約5千部の採択にとどまっております。

しかしながら、扶桑社の投じた一石は大きな波紋を生み出し、他社の多くの教科書で自虐史観とは異なる記述への変更が行われるなどの「成果」を生み出し、教科書の体裁も生徒が学びやすいグラフィックなものに多くが変更されるなど、ややもすると旧態依然たる教科書出版業界に強い刺激を与えたと自負しております。

元来、扶桑社の教科書は、前述しました自虐史観の叙述が多い従来教科書に疑念を呈する有識者の任意団体である貴会「新しい歴史教科書をつくる会」と産経新聞社の意向が一致し、発行が企画されたものであります。その後、発行計画を具体化するにあたって、産経新聞社が発行主体になることは法的に適わないことが判明し、フジサンケイグループの出版社である扶桑社が発行主体となったものであります。

従って、確かに扶桑社が発行・発売を自己の責任において行うことに疑いはありませんが、この経緯からして扶桑社教科書は、「新しい歴史教科書をつくる会」がこれを推薦するという構図で発行されたものであります。

ところが、ご承知の如く2006年度供給本の採択活動が終了した一昨年9月以降、「新しい歴史教科書をつくる会」が会長人事などで組織内に混乱を生じ、昨年、有力メンバーの一部が、つくる会と袂を分かって「日本教育再生機構」を設立する事態となり、「新しい歴史教科書をつくる会」が事実上分裂する状況となりました。扶桑社としましては、この間当事者からは距離をおいて客観的に状況を注視して参りましたが、現在においても依然として常に不協和音が生じる状態が継続していると認識しております。

2010年供給本の編集開始にあたっては、扶桑社としては従来の「新しい歴史教科書をつくる会」が「再現」され、その推薦がスムーズに実現することを前提として作業に入ることが必須と考えておりましたが、貴会の一部の有力メンバーの方々が「再生機構」との協働をはっきりと拒否されることを公言されているなど、現状を見るに前回同様の幅広い推薦を頂ける状況に無いと判断するにいたりました。

教育改革は現在の我が国最重要テーマであり、その中で、昨年12月に教育基本法が改正され、その趣旨も踏まえた教科書改善も主要な課題となっています。このような背景の中で、当社としても次回の中学社会・歴史と公民の教科書発行に新たな取り組みをいたすことにいたしました。

その際に、前二回の枠組みが使えない状況下、「新しい酒は新しい皮袋に」という故事もありますが、教科書発行を主業務とする別法人を立ち上げ、そこからの刊行を予定しております。

次回の教科書発行に当たっては、これまで以上に教育界を含めた広範な国民各層からの支持をいただけるものにしなくてはなりません。そこで、この新たな教科書作りに賛同していただける各界の方々の協力を仰ぎ、別法人が責任を持って教科書を発行する所存でございます。

以上、縷々申し上げてまいりましたが、何卒、当社の意図をお汲み取り賜りますようお願い申し上げます。