監修権問題に対する「つくる会」東京両支部の声明 

 「新しい歴史教科書」の監修権は、「つくる会」の理念を踏襲し更なる完成を目指す不断の努力を担保する極めて重要な権限であることは、会員ならば自明の事である。ところが、去る九月二十日、西尾幹二氏の「日録」で、扶桑社が「つくる会」の意向を無視し名実共に扶桑社版の歴史教科書をつくる動きがある、と書かれていた事を受け、私たちは東京支部長及び東京三多摩支部長の連名で、九月二十七日付けで小林会長に事実関係を問う「要望書」を提出し、会見を申し入れたが多忙を理由に実現しなかった。後日、事務局長の鈴木氏より連絡があり、九月二十九日に緊急理事会が開かれ監修権問題について討議するとのことであった。更に十月二日には鈴木氏に問合せたところ、緊急理事会では扶桑社との交渉の方法論について協議をした事、これから扶桑社と具体的な交渉に入り暫く時間が掛かるとの事であった。 

 「つくる会」東京両支部としては、この時点で監修権をめぐる噂は多くの関係者の証言により事実であると確信したが、扶桑社がなぜ扶桑社版歴史教科書を作るのか、その場合「新しい歴史教科書」はどうなるのか、「つくる会」の監修権はどうなるのかなど不安は募るばかりであった。

  我々の情報収集の結果は「存亡の危機」に書いたとおりであるが、事実確認の為に本部には度々連絡をしたにも拘わらず、小林会長宛の「要望書」はその後も無視され、緊急理事会の折にそのような「要望書」が出ている事を照会する為、全理事に配布するとの事務局長の約束であったがそれも守られる事は無かった。我々は止む得ず、高池、福地、藤岡の三副会長宛にも同文を送り、更に十月十一日には各理事宛に同文を送り、「つくる会」の監修権を守るよう要請したが、未だに誰からも回答を受け取っていないのはまことに遺憾である。

  今回の事態は、八木氏の「教育再生機構」と扶桑社による監修権簒奪であり「つくる会」乗っ取りとも言うべき攻撃である。それに対して「つくる会」本部は公に反撃することもなく、全国一万人の会員を無視し、本部独断で交渉する姿勢は我々の信頼を裏切る行為であると言わざるを得ない。前回の騒動の時もそうだが、本部は危機を宥和で乗り越えようとしてきた。理念や原則が共有できる相手ならば宥和も結構だが、「つくる会」に多大な損害を与え、社会的名誉を傷つけて、逃げるように脱退した八木氏らが、自らの失態と政治的欲望を隠蔽するため、取敢えず旗揚げをしたのが「教育再生機構」である。私達の「つくる会」は、彼らとは決して連携する事が出来ないはずなのに、つくる会本部は再び宥和でこの危機に対処しようとしている

  「つくる会」は既に10年の誇るべき歴史を持ち、教育界に大きな影響を与えた「新しい歴史教科書」という貴重な財産を有している。これも総て先人達の血の滲むような努力の結果であろう。其の財産を受け継ぎ発展させるのが我々に課せられた義務ではないか。その高貴な義務を保身のために捨て、乗っ取りに協力するのは総ての先人と会員への許し難い裏切りである。私たちは「朝日新聞に批判されない歴史教科書」を作るために10年もの長きに亘って努力してきたのではない。採択の現場では苦戦していても、中国や韓国が目の敵にする誇り高い活動をしてきたのだ。前回の騒動もそうであったが、今回の監修権騒動も正当性は「つくる会」にある。従って我々は世間に向けて堂々と騒動の経緯を説明し「つくる会」を潰そうとする勢力に立ち向かえる。

なお、去る10月24日、急遽小林会長との会見が実現したが、質疑応答に於いて我々の疑念や不安が解消されることなく益々混迷を深めたのは眞に遺憾である。

つくる会会長と理事各位に対する要請

産経と扶桑社の意向に媚びて、理不尽な要求を受け容れないように、要請する。
「つくる会」が「教科書つくり」で八木氏の「教育再生機構」と協力しないように要請する。

平成十八年十月二十五日

 

                      「つくる会」東京支部長     島 ア  
                      「つくる会」東京三多摩支部長  渡 辺  眞